コラム記事・研究会レポート

エネルギー医学の究極の鍵 「意識シリーズ」(2)

2021/04/04
研究会

文・降矢英成(エネルギー医学研究会世話人代表)

「意識はエネルギーの最高レベルの形態である」これは、『バイブレーショナルメディスン』を著したリチャード・ガーバーの名言です。
エネルギー医学を、ボディケア、レメディ、エネルギー機器などのさまざまなアプローチから実践・追求していくと、共通のキーワードとして必ず「意識」に突き当たることになります。
そこで、エネルギー医学研究会では満を持してこの究極のテーマである「意識」をテーマに4回連続講座をスタートしました。ここでは第2回をレポートします。

第2回 脳・身体から観る「意識」&哲学から追究する「意識」

2020年12月5日(土)開催
主催:日本ホリスティック医学協会 関東フォーラム委員会

「脳·身体から観る「意識」とは?」
講師:小笠原和葉 (ボディワーカー、ボディーサンクチュアリ代表)

「量子脳理論」を提唱しているペンローズは、「脳で生まれる意識は宇宙世界で生まれる素粒子より小さい物質であり、重力・空間・時間にとわれない性質を持つため、通常は脳に納まっている」「体験者の心臓が止まると、意識は脳から出て拡散する。そこで体験者が蘇生した場合は意識は脳に戻り、体験者が蘇生しなければ意識情報は宇宙に在り続ける、あるいは“別の生命体”と結び付いて生まれ変わるのかもしれない」という広い認識を述べています。
「脳」と「心」の関係、「心」と「体」の関係は、従来から「心身問題」「心脳問題」といわれて多くの議論がなされてきており、身体がなければ意識を経験することはできないが、「意識=脳なのか?」というテーマとなっています。
「脳内ニューロンの古典的振る舞いだけでは自由意志を説明できない。ニューロン単位ではなく、微小管(マイクロチューブル)と呼ばれる量子課程が起こりやすい構造から生ずる」という、ペンローズの量子脳理論に対して、日本の量子物理学者である大栗博士など多くの学者の見解は「物理と生物は条件、状況がかなり異なっている」として「おそらく熱的ゆらぎのほうが大きいので量子力学的効果があっても打ち消されてしまうだろう」という認識となっています。
とはいえ、脳が意識と関連が深いことは否めず、脳内で起こるさまざまな種類の神経活動が、意識の覚醒に関わっており、大脳皮質、特に前頭葉の活動は意識的経験の覚醒に関わっているというのが脳科学の基本的な見解となっています。特に「島皮質」は感覚を統合する役割を持った部位で、外部の感覚、世界と内部の感覚、自分のバランスを取る役割も果たしており、島皮質がほどよく活性化していると、外的感覚と内的感覚がほどよく統合され、「世界の中に存在する自分」という適切な自己感覚が作られることがわかっています。
そして、恍惚発作やフロー体験では、島皮質が過剰に活性化し、外的感覚と内的感覚が統合されすぎてしまい、世界と自分が一体化してしまうようになるため、フロー状態になると我を忘れ、「自我」という意識がなくなるとされます。
一方、脳だけでなく「身体:somaソマ」が重要とする「ソマティック・マーカー・仮説」では、意思決定において情動的な身体反応が重要な信号を提供するとしており、「情動を感じる能力(感情プロセス)が思考や意思決定にとって本質的だ」としており、最近、注目されている「ソマティック心理学」の視点の重要性が指摘されました。

 

「意識を巡る哲学的なディベート」
講師:戸田美紀 (環境学博士、NPO法人日本ヒーリングタッチ協会会長)

「エラン・ヴィタール:生命の飛躍(躍動)」を説いたアンリ=ルイ・ベルクソンは、「人間が存在として宇宙的生命の歴史の中に誕生し、意識をもったということは、意識を生み出す時空がある」とし、意識は「あったこととあるだろうこととの間を結ぶ連結線であり、過去と未来の間に渡された橋である。意識とは、自由を伴った記憶であり、そこには真の成長がある」と評しています。
モーリス・メルロー=ポンティは、「意識の多義性」を唱えました。意識の捉え方は、「覚醒」(起きている、覚醒している)、「他動詞的意識」(○○に気づいている)、「注意」(注意を向けるという意味の意識)、「主観的経験」(現象的な質)、「自己意識」(自分がいるということに気づいていること)、「メタ認知」(自己の心的状態について把握する行為 ~自分は今機嫌が悪い、自分は今○○をしたいと思っている)、「心霊主義的な霊魂」的な意識(体と独立した心的実体があるという考え方は、心身二元論、実体二元論などと呼ばれる)など、多義的といえます。
そして、「クオリア(感覚質)」という客観的には観察できない意識の「主観的な性質」というテーマがあり、「志向性」と「階層構造」が意識の本質とし、クオリアが階層的に集合してより複雑な表象が生じるとしています。
「生物学的自然主義」で人工知能の研究者であるジョン・サールは、意識は物質世界に属さず、そもそも存在しないか、「意識は存在するが物質世界に影響を与えない」としました。そして、脳が意識を持つ仕組みが不明なので、今のところ意識を持つ機械(人工意識)は作れない(可能性はあるが)としながらも、意識は純然たる生物学的な現象であり、科学的な分析の対象として認めるべきともしました。
そして、「新実存主義」を提唱しているマルクス・ガブリエルは、意識の哲学( philosophy of mind )の主流である脳を偏重する自然主義・物理主義に対して、「反自然主義(反物理主義)」を提唱し、『私は脳ではない』(講談社)という書物を書いています。
仏教の叡智である「唯識論」では、存在は8つの「識」からなり(意識全て、無意識も)、 諸存在は主観的な識でしかなく、客観的な存在ではなく、無常であり、消滅を繰り返し、最終的に過去に消え、空であり、実体はないとしています。もっとも奥底の「阿頼耶識」は、根本、源泉、全ての識が生まれる領域であり、その上の「末那識 」は自分を生み出し、世界とつなげ、苦しみの源泉とされ、自分自身という幻想、世界への執着への根拠になるとされます。
また、東洋思想の荘子は、思考が物事を限定的に捉えるので、流れていく現象に対してどんどん差異ができるとし、思考から解き放たれて、流れに沿って自然に振舞えば、自然に良い行いができる、それが「道」であると説きました。

 

この後の第3回、4回では、既存の学問の意識の捉え方を超えて、「意識の階層」と「高次の意識」をテーマに行う予定であり、期待しています。

(エネルギー医学研究会・世話人代表:降矢英成)


『HOLISTIC MAGAZINE 2021』(2021.2.25発行)
研究会レポートより

本セミナーは、Vimeoオンデマンドで受講できます。
https://www.holistic-medicine.or.jp/movie/「意識」シリーズ2/
【1】“脳·身体”から観る「意識」(本編61分)
【2】哲学からの意識(本編60分)