コラム記事・研究会レポート

エネルギー医学の究極の鍵 「意識シリーズ」(1)

2021/04/04
研究会

文・降矢英成(エネルギー医学研究会世話人代表)

「意識はエネルギーの最高レベルの形態である」これは、『バイブレーショナルメディスン』を著したリチャード・ガーバーの名言です。
エネルギー医学を、ボディケア、レメディ、エネルギー機器などのさまざまなアプローチから実践・追求していくと、共通のキーワードとして必ず「意識」に突き当たることになります。
そこで、エネルギー医学研究会では満を持してこの究極のテーマである「意識」をテーマに4回連続講座をスタートしました。ここでは第1回をレポートします。

第1回 「意識研究の流れ」&「心理学における意識」

2020年10月3日(土)開催
主催:日本ホリスティック医学協会 関東フォーラム委員会

「意識とは何か~意識研究の流れ」
講師:降矢英成 (赤坂溜池クリニック院長)

本講座では、まずはじめに「意識研究の流れ」の課題書籍として『1冊でわかる意識』スーザン・ブラックモア(岩波書店)をベースに説明しました。「意識」は物理学、哲学、心理学、脳科学など、多岐にわたる研究対象になっており、全体像を網羅している本があまりないのですが、この本はこれらすべての領域に触れており、生理学的や脳科学的なレベルの意識だけでなく、仏教などの高尚な意識レベルまでカバーしています。
「唯脳論」という唯物的な立場で「ハード・プロブレム」などの視点から意識を定義する英米系の「心の哲学」の流れがあり、さらに、エーデルマン&トノーニが提唱したニューロンの大集団が時間的に変化するという「統合情報理論」、さらには量子物理学の視点から昨年のノーベル物理学賞のペンローズと麻酔科医のハメロフによる「量子脳理論」や日本の物理学者保江邦夫氏による「量子場脳理論」で意識を解明する流れもあります。
また、意識そのものではありませんが、「自由意志はあるか」というテーマが、形而上学、哲学において最も議論されてきた重要事項になっており、「自由意志」などなくすべてが脳・神経の反応ということになると、道徳的責任や法律は危機に瀕することにもなり、自分で人生を選択するとか、成長するということも偶然の産物になりかねません。
この問題を研究したアメリカの生理学者ベンジャミン・リベットは、結論として「意識的な拒否権」とか「自由な拒否権」という範囲のものしかないといいますが、これが当てはまるのは「いつボタンを押すか」などの低レベルの選択であり、もっと高度の「人生の選択」などには当てはまるものではないでしょう。
また、「変性意識状態」も魅力的な研究テーマになっており、「瞑想」とか「黙照」など、意識の「本質」を「直接洞察」する東洋の智慧も注目されており、奇才の思想・哲学者の井筒俊彦氏は『意識と本質』(岩波文庫)という名著で、孔子と老子の本質論の違いを取り上げ、孔子は礼節など表層意識を扱い、「本質」の実在性を認める立場に立っているが、老子は「道、自然」など深層意識を扱っているため、「本質」など存在しないとしていると解説しています。
そして、意識は「錯覚」であり、人間と同じように意識をもてるのは、人間と同じくらい錯覚をもてる、ある程度高度な生き物のみという見解もあります。脳科学者の茂木健一郎氏は『クオリアと人工意識』(講談社)の中で、AI(人工知能)と人工意識の違いを説明し、「強い人工知能」は、人工知能が人間の思考力、感性を広くカバーし、意識まで「人工意識」というかたちで実現できるとする見解ですが、人工知能には「自由意志」が実装されていないので、人工意識の開発はかなり難しいとしています。

 

「心理学における意識の研究と歴史」
講師:川畑のぶこ (心理療法家/NPO法人サイモントン療法協会代表理事)

「意識」は自然科学の対象として客観的に研究する素材となりにくく、心理学のテーマとして敬遠されがちでしたが、やがて知覚、記憶、学習、知能に関する科学的手法が適用され、観察+実験の遂行のなかでさまざまな理論が生まれてきました。
実験心理学の父・ヴィルヘルム・ヴントの機械論的・分析可算的発想に多くの疑問があがり、「思考」などの高等な意識の研究の可能性を探求していた学派の離反や、「全体は部分の総和以上のものである」とするゲシュタルト学派(20世期初頭)が系統だって反論を展開。そしてアメリカで生まれた行動主義により、古典的実験心理学の意識主義的立場や内観的方法も根底から問い返されることになり、ヴント自身も生理学的心理学(実験心理学)の創設と同時に、その方法的限界にも気づき、言語、習慣、宗教など歴史的文化の研究を通して人間の精神発達の法則を追求するように変遷しました。
また、無意識を発見したフロイトが現れ、その弟子だったユングは、無意識をフロイトが「心のゴミ箱」と捉えたのに対して「心の宝庫」と評価し、さらには個人の無意識を超えて「集合的無意識」を提唱しました。
一方、アメリカのウイリアム・ジェームズは、「意識=流れ」という視点を提唱し、意識は、それ自身にたいして断片に細分化された形であらわれはしない。意識は諸部分から接合されているのではなく、ひとつの流れであり、絶えず進化している、ととらえました。
また、ユニークな見解で知られる、アメリカの神経学者・神経心理学者・哲学者でもあるアントニオ・ダマシオは、意識とは「夢も見ないほど深く眠っている時や麻酔にかかっている時に失われてしまい、睡眠や麻酔から目覚めた時に再び回復する何かであると言える」とし、意識に不可欠な「自己」という概念を提唱しました。
そして、その後のダイアローグにおいて、最近の心理学の流れとして「実存心理学」「人間性心理学」「トランスパーソナル心理学」などの意識観も補足されました。


『HOLISTIC MAGAZINE 2021』(2021.2.25発行)
研究会レポートより

本セミナーは、Vimeoオンデマンドで受講できます。
https://www.holistic-medicine.or.jp/movie/「意識」シリーズ1/
【1】意識とは何か ~意識研究の流れ(本編52分)
【2】心理学における意識(本編56分)