コラム記事・研究会レポート

代替療法家・セラピストの視点

2019/03/31
コラム

◎文・林サオダ(当協会理事)

「ホリスティック」という概念は、まだ十分に浸透しているとは言えませんが、一般の人が代替療法、統合医療、ホリスティックな医療という言葉から連想するのは、心身が一体であるとみなしたケアです。未病段階や回復期において、また医学的に治療中でも、併用して代替療法を利用する人達は着実に増えています。そこで、ここではホリスティック医療を目指す、代替療法家・セラピストについて考えてみたいと思います。

まず初めに、療法家やセラピストであっても、個人としての自分が、他者の援助者になる以前に、「ひとりの人間として、時には病み、精神的に苦しむこともあり、やがては死んでいく存在である」ということを認識することが大切です。ホリスティックとは、医療や健康のことだけを指すのではなく、生命全体の概念です。それをどのように捉えているかで、その人がもつ人間観・宇宙観が本人の全生活に表れ、当然職業生活にも反映されるからです。

また、代替療法家・セラピストがホリスティックな視点をもつためには、自分が軸足とするひとつのセラピーに習熟することはもちろん大事なことですが、他のセラピーや療法や医学に対する開かれた心と学びも大切です。
そして、実践のありかたについては個々様々ですが、ホリスティック医療には次のようなスタイルがあるということを紹介いたします。

1 セラピスト自身が、複数のセラピー・療法を習得して実践

自分が軸足とするメインの代替療法やアプローチ以外にも習得している複数の選択肢の中から、相談者が希望するセラピーを提供する。そのセラピーだけで、よい結果を得て終了していく場合もあれば、相手が抱えている問題が好転しつつも、先に進みにくい状況が起きた時に、本人の了解を得て、他の療法を導入、または併用する。

2 ネットワークによるホリスティックなケア

セラピスト自身は、自分の専門とする療法を提供し、相談者のニーズに応じて、他の治療家へ紹介していくという形のネットワークを構築して実践する。

3 医療機関におけるチーム医療に関わるセラピスト・代替療法家

ホリスティックな意識をもって診療を展開する医療施設にセラピストが参加し、医師を中心としたカンファレンスを通して、患者に各専門分野での関わりをもち、連携で活動する。

実際、上記1~3のどの方向性を目指すかで、さらに学ぶべきことや獲得すべき資質が自ずと明確になってくると思いますが、ホリスティックケアを利用するユーザーの希望と療法家・セラピストに求められる要素として、次のことを意識することも必要です。

<ユーザーの希望>                  <求められる要素>
●症状の軽減、あるいは治癒を希望           →有効な治療技術
●セラピーの選択権・決定権は本人が持つ        → 相手を尊重する姿勢と人間性
●異なる治療法を導入しても、その移行がスムース    →専門以外の療法に対する開かれた心
●ホリスティックなケアを受けた満足感・信頼感     →ホリスティックな人間観とライフスタイル

そして最終的には癒しの関係である、セラピストと相談者の関係においても、人と人、生命と生命が出会っているということが何よりも重要であり、 そのこと抜きにはホリスティックな“生命の癒し”は語れないでしょう。

会報誌『HOLISTIC News Letter Vol.71』より