コラム記事・研究会レポート

医療塾 第15回「こどものためのホリスティックケア」

2017/02/07
医療塾

医療従事者のための「ホリスティック医療塾」
2016年12月23日(日)於:大阪
◎レポート:愛場 庸雅(日本ホリスティック医学協会理事)

第15回「こどものためのホリスティックケア」

こどもは、肉体的にも精神的にも成長・発達途上にあるとともに、親や周囲の人々とのかかわりも大きく、その医療とケアには、大人のそれとは大きく違った視点と方法が必要になってきます。
今回は、こども病院に勤務されているホスピタル・プレイ・スペシャリストの山地理恵氏と、アロマセラピストで小児タッチセラピー指導者のはやしひろこ氏(協会理事)にお話を頂き、こどもたちのためのホリスティックケアについて考えてみました。

山地氏は、「あそびを通してこどもと家族を支える~療育環境の取り組み~」と題して、病院にいるこどもの問題とそのための取り組みを紹介してくださいました。
病院という環境下では、閉鎖空間、家庭生活体験の不足、受動的治療生活、集団経験の不足、就学前教育の未整備、といった問題があり、発達への影響も懸念されます。全人的(肉体、精神、社会、霊)苦痛の中でも、特に社会的苦痛が子供に特徴的です。

こどもにとっては、遊びも医療であり、EACH憲章(病院のこども憲章)にも「遊ぶ、学習する」は取り上げられています。ホスピタル・プレイ・スペシャリストは、こどもの成長発達を促進し、こどもと家族の精神的負担を軽減、緩和して、主体的に医療体験に臨めるように支援するのがその役割です。
遊びを提供し、遊びの環境を整えること。医療体験についての感情を表出できるようにして、ストレスや不安を軽減させる。処置、治療、手術などの準備の援助と処置中のサポート。家族のサポート、きょうだい支援。行事イベント企画、などを行っています。
病院での具体的な取り組みとしては、プレパレーション(そのこどもに適した方法での心の準備やケアを行い、環境を整える。)、ディストラクション・セラピー(処置よりもほかの何かに集中して不安や痛みを軽減できるような非薬物的治療)、わくわくるーむ(医療から解放された安心な遊び場所)の設置、ビーズ・オブ・カレッジ(小児がんや慢性疾患のこどもが、自分の治療過程をビーズで記録し、それを贈られることで勇気と頑張りを讃えると)いう心を支える活動、などが紹介されました。

はやし氏には、「医療ケアが必要なこどものためのタッチケア~小児病棟での実践報告~」と題してお話を頂きました。

乳幼児が育つために必要なことは色々ありますが、もっとも大切なのは、信頼感をはぐくむことです。ふれること(タッチ)は最も原始的なコミュニケーションツールで、こどもと親の双方の、心身を穏やかにして、不安と痛みを和らげ、心身のバランスを整える。愛着形成と自己肯定感を育て、成長を促す。といった効果があります。実際、触覚刺激とさまざまなホルモン分泌との関連が指摘されています。
タッチケアの効果としては、痛み、不安、嘔気・嘔吐、疲労、不眠、抑うつ、便秘、などの症状の改善、免疫システムや生理機能の活性化、ストレス軽減、術前後のリラクゼーション、治療の反応の軽減、親子関係の改善、嚥下・発達の促進、などがあります。入院期間の短縮やターミナルケアにも有効です。脳性まひ、がん、急性脳症、自閉症、など、病棟でのタッチケアセラピーの実際を紹介していただきました。
「ふれることはふれられること。肌にふれることは、体に、心に、存在そのものにふれることであり、認め、受け入れ、支えること。ふれることは愛を伝えること」とおっしゃってました。

ディスカッションでは、このような活動も、多くは寄付やボランティアによって成り立っている部分があるという問題や、こども同士の関係、こどもと家族との関係などについてももう少し時間をかけて考えたいと思われました。
ホリスティック医学では、関係性や場という視点を重視しますが、こどもにかかわることはまさにホリスティックなアプローチが必要であることを実感しました。