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私のホリスティック医療への取り組み

2017/12/12
コラム

文・朴澤 孝治 (ほおざわ こうじ) 
朴澤耳鼻咽喉科、統合メディカルケアセンターTree of Life。当協会副会長。

私のホリスティック医療への取り組み

日本の国民医療費は、超高齢社会に突入し、増加の一途です。1990年には20兆6,074億円であったのが、2010年には37兆4,202億円と倍近くになっています。その内訳を見ると、手術、検査、点滴など入院にかかる医療費は1990年の41.5%から、2010年は37.7%と減少し、検査、治療など外来にかかる経費も45.7%から35.1%へ減少しています。これに対し、薬剤関係は、2.6%から16.4%まで増えています。医療費に占める薬剤費の比率を他の国と比較すると、日本では31.0%であるのに対して、フランス19.9%、ドイツ17.1%、イギリス16.4%、米国11.3%となっています。国際的に見ても、この20年で日本の医療が薬に依存する傾向が急速に進んでいることがわかります。

薬に頼る対症療法は、病気そのものが治るわけではなく、症状を緩和しているだけですから、自ずとその治療効果には限界があります。マイケル・ジャクソンは2009年6月25日自宅で亡くなりました。まだ50才でした。彼は不眠と全身の痛みに悩まされていました。彼の主治医、コンラッド・マレイ医師は、薬で症状をコントロールしようとしましたが、徐々に薬の効果が無くなり、より強い薬をより大量に使用するようになりました。そして最後は、致死量の麻酔薬プロポフォールを投与し、それが原因でマイケルは亡くなりました。これは、薬に頼る対症療法が如何に危険かを教えてくれています。

一方、英国女王エリザベス2世は今年、90才になりお元気です。イギリス王室の主治医の一人ピーター・フィッシャー医師は、王立ロンドンホメオパシー病院の理事です。西洋医学に補完・代替医療を加えた統合医療をイギリス王室は採用しているのです。薬に頼らないバランスのとれた医療を見習うべきではないでしょうか?

朴澤耳鼻咽喉科と併設の統合メディカルケアセンター Tree of Life を開業し、6年が経とうとしています。東日本大震災による心身に大きな傷を負った方々を、診療する機会を得て、まさに患者様に教えていただきながらのホリスティック医療でした。西洋医学、サプリメント、点滴療法、ホメオパシー、ヨーガ、呼吸法、霊気、チベット体操、鍼灸、ヒプノセラピー、アロマテラピー、バッチフラワー、ファスティング、音声治療、音楽療法、などなど、様々な方の協力を得て、その患者様に最適な治療法は何かを問う毎日でした。山伏に除霊をお願いすることもあったほどです。このような経験を通じて今、以下のことを感じます。

1.人は遺伝子的にも、精神的にも千差万別であり、外的刺激に対して同じ反応が出ることは有りません。震災後、同一のホメオパシーレメディで多くの方の、様々な症状を改善することができましたが、数ヶ月後には、効力を失い、お一人お一人に個別なレメディが必要となりました。

2. 従って、西洋医学を含め、単一の治療体系が、すべての病を癒すことはできません。巷に喧伝される○○は△△で治る。1分で治る□□。などはあり得ません。一発芸は、お笑いの世界でのみ価値があります。

3. 人々がホリスティックに目覚めることは、大変有意義です。なぜなら、自分の体、心の声を聞き、気づきを得ることが、健康を維持し、病を癒す一番大きな力になるからです。

4.  一方、人の健康に介入し、ホリスティック医療を施すことは、生半可な覚悟では行えません。人まるごとの医療がホリスティック医療なら、その医療は果てしのないものです。患者様の訴えを理解するには、一つの医療体系の知識では不十分で、遺伝子、細胞から、エネルギー医学までの知識が必要になるでしょう。西洋医学以外のことを施術すれば、ホリスティックなどとは決して言えないのです。

5.  遺伝子情報を基に、細胞、臓器の集合体として人体が形成され、自律神経や、ホルモンなどの液性因子で統制されています。様々な外的な刺激を処理する他、アレルギーなどの過剰な生体防御反応や、加齢変化などによる障害にも対応しています。更に、腸内細菌など、自分の細胞数よりも多い細菌と共存しながら恒常性を保っています。この肉体も、実は70%は常に振動する水であり、その外層には、エーテル体、アストラル体、コーザル体があるとされています。以前は、最上層の部分に働きかける治療を行えば、その下層の異常は改善できると考えていました。しかし、最近はその考えは間違っていると感じています。
たとえば、遅延型食物アレルギーの方に、いくらエーテル体に作用する治療を行っても、改善が得られるのに大変な時間がかかってしまいます。アレルギーの食物を避けるように指導するのが最も効果のある治療です。症状の原因がどこにあるかを的確に知り、そこに作用する治療法を選択することが、最も効果的です。真のホリスティック医療が行えるのは、おそらく神のみでしょう。

6.  一人でホリスティック医療を行うのは不可能なら、一人ひとりが自分の行う医療の限界を知り、他の治療家と連携することで、神に近づくことができると思います。現代の医療は、西洋医学に患者様を囲い込んでいるところに問題があります。根治できずに対症治療に逃げたり、思うような結果が出ずに、患者様につらく当たったり、囲い込み医療は、患者様にとって大変迷惑です。西洋医学の囲い込みを批判しながら、自分の医療に患者様を囲い込むのは、大変問題です。自分の施術が、患者様の症状に大変効果が出るなら大いに治療に励んでいただきたいですが、自分の知識では、患者様の症状が理解できない、治療が歯が立たないときは、囲い込まないで、信頼できる連携する治療家に相談すべきでしょう。

このような意識が、日本の補完代替医療に欠如していることは大変残念です。玉石混淆の治療家が、無秩序に補完代替医療を行えば、国家資格を持つ医師が系統立った医療を行う現代医学に、いとも簡単にねじ伏せられてしまいます。ホリスティック医療を成就させるには、携わる治療家一人ひとりの知識と技量の向上に加え、連携の意識を持つことが肝要です。

というわけで、まだまだホリスティック医療を追求する日々は続きます。ホリスティック医療は、哲学ではなく、医療である以上、実践することで初めて、答えを見つけることができます。日本ホリスティック医学協会が30年間継続したことは、大変素晴らしいことです。そして、次の30年で、日本の医療に貢献できる、より実践的な活動が行えるよう期待しています。

HOLISTIC MAGAZINE 2017』より

朴澤 孝治 (ほおざわこうじ) 
朴澤耳鼻咽喉科、統合メディカルケアセンターTree of Life。当協会副会長・北日本支部長。
東北大学医学部卒業。米国ハーバード大学留学中の基礎研究成果と、東北大学病院助教授、仙台社会保険病院院長補佐など長年にわたる臨床経験をもとに耳鼻咽喉科の診療を行う。2011年朴澤耳鼻咽喉科を開院。同時に、漢方、ホメオパシーなどの補完医療も症例に応じて採用する統合医療を実践している。