コラム記事・研究会レポート

医療塾 第5回「ホリスティック アプローチの実際 Ⅱ」

2013/05/12
医療塾

医療従事者のための「ホリスティック医療塾」
2013年3月31日(日)於:関西医科大学滝井病院 南館2階臨床講堂
◎レポート:愛場 庸雅(日本ホリスティック医学協会理事)

第5回「ホリスティック アプローチの実際 Ⅱ」

医療塾第5回は、「ホリスティックアプローチの実際」の第2弾として、実際のクライエントさんに来ていただき、各種療法のかかわりを学びました。
なお、今回から参加資格を、「当協会の専門会員」に限定させていただきました。

・症例呈示と西洋医学的解説(木村泉氏)
・心身医学の立場から(黒丸尊治氏)
・整体の立場から(岡田俊一氏)
・東洋医学の立場から(野網昭南氏)

患者さんは60代の女性、訴えは17年ほど前から急に始まった、就寝中の大量の発汗です。
毎日のことで、何度もパジャマや寝具を取り換えなければならない。熟睡が出来ず体調を崩しやすい。
更年期のせいで、いつかは治るだろうと思っていたのだが、それを過ぎてもいつまでも続いている。
そういう症状です。他に、一度だけTVの画面がモザイク状に見えたりしたことがあるとか、右目の視野欠損のような症状などもあります。

西洋医学的なアプローチとしては、甲状腺ホルモンの異常やいわゆる多汗症を疑いますが、特に異常は認めず、婦人科的にも異常なし。一過性の脳梗塞のような症状に対して、脳神経外科での検索はすすめるものの、発汗そのものの原因は不明で、いわゆる自律神経失調症と考えざるを得ず、現在グランダキシン®を投薬中です。

心療内科的アプローチとしては、心の変化が体の変化を起こす、患者さんは自ら治す力を持っているという考え方で臨みます。

そのために、「こんなときは汗が出なかった、あるいは少なかったというのはどんな時ですか?」「汗が出てかえって都合のいいことは何かありますか?」「今まで治そうとして、どんなことを試みたのですか?」「今後どうなってゆけば良いと思いますか?」などの質問をして、患者さんの気づきを促すことを試みます。

「原因が何か」というより、「こうすればうまくゆく」ということを見つけ、モチベーションを作ることを目標にします。

整体からは、腰痛が1年くらい続いたこともあったということから、体のバランスや動き、頸椎や腰椎の状態を見るとともに「一番困っていることは何なのか?」、「民間療法はどうだったか?」などを聞き、「汗が出るというのは何か他に出せないものを出すためではないか?」など、「原因を見つけるというより作る」といった、色々視点を変えてみる方法があることを紹介されました。

東洋医学の視点からは、汗以外の症状、水分摂取量、食物の好み、尿量、便通、血圧などを聞くとともに、本人の病気を治そうとするスタンスや、不安なことを質問します。その結果、漢方薬を処方するとすれば、黄耆の入っている処方、すなわち補注益気湯、十全大補湯、防己黄耆湯、加味帰脾湯、柴胡桂枝乾姜湯、などの中から体質に合わせて選ぶのが良いのではないかとアドバイスされました。

他に出た意見としては、「本人の性格や家族関係などについてのアプローチも必要ではないか」、「急に症状が始まったので、例えば何かのたたりといったようなスピリチュアルなアプローチも考えられるのではないか」という意見もありました。