コラム記事・研究会レポート

医療塾 第19回「私の実践 船戸崇史先生へのインタビュー」

2019/08/23
医療塾

医療従事者のための「ホリスティック医療塾」
2018年12月16日(日)於:大阪
◎レポート:愛場 庸雅(日本ホリスティック医学協会理事)

第19回「私の実践 船戸崇史先生へのインタビュー」

今回は、岐阜県で在宅医療を中心にホリスティックな医療を実践、昨年がん患者のためのリトリート施設「リボーン洞戸」を立ち上げられた、当協会理事の船戸崇史先生(船戸クリニック院長)にお話を伺いました。

Q:先生が、ホリスティックに目覚めた時は?
消化器外科医になろうと思ったのは、ブラックジャックのようなカッコよさにあこがれたから。でも、「がんを持っているさまざまな人」と出会うことにより、医者の傲慢さ、医療はサポートであることに気づき、死に方も考えるようになった。完璧な手術でもがんが再発する人がいる一方、進行がんでも治ってしまう人がいる。自分のメスで「治す」ことはできないことを悟って、在宅医療で患者さんにかかわろうと思った。

Q:施設の経営はどのようにされていますか?
保険診療と自由診療を完全に分けている。自由診療では収益は上がらないが、趣味だと思っている。保険診療で20年ほどかけて財源を作り、この5年ほどでようやくホリスティックな医療をできるようになった。経営は重要な側面であるが正面ではない。お金儲けに走ると患者さんはそれをわかっている。

Q:職員の教育は?
全部で180人くらいの職員がいて、医療職は40人くらい。あとは介護職など。そのうち本当に理解してくれているのは数人か? 自分の後姿をみてついてきてくれると思っている。父の言葉だが、「本気で求めれば人と金はついてくる」と。価値観の似ている人、信頼できる人を一本釣りで来てもらっている。

Q:患者さんへ、先生の理念をどう伝えていますか?
人間は治るようにできていること、あなたの中にある治す力を引き出すこと、を伝えているが、言葉だけでは伝わらないかも。行間に現れるものはあると思うので、患者さんが汲み取ってくれるのではないか。自分は笑顔で死にたいだけなので、患者さんにも笑顔になってほしい。

Q:クレーマーに対しては?
そういう人が現れるのは自分自身の問題であると思う一方、是々非々での対処も必要。

Q:価値観の異なるDrとの付き合いは?
基本的に付き合わない、合わせておく。在宅医療という立場での話しはできる。現代医学を軽んじているわけではなく尊敬する部分もあるが、自分の知識だけで完結させようとする点は間違っている。

Q:困っていることは?
全て課題だと思っている。絶対必要と思っていることはできる。ネガティブな意見というのも、関心があるということ。

Q:ご自身の健康管理は?
五体投地や読経など。週1回程度カウンセラーと話したり体をほぐしてもらったり。がんになった時は、その瞬間が分かったような気がした。体の言い分を聞いて、最低6時間は寝る。

Q:理想の死に方は?
老木が倒れて朽ちるようにとか、眠るように、とか数パターン用意しておくといいかも。励まされた死に方は、亡くなる前に全ての指示をすませ、一人一人にお礼を言って、ガッツポーズで死んでいった人。周囲の人を後悔させず、何かを残せる。

Q:これから続く医療人へのアドバイス
医者である前に人であってほしい。学問的な正しさよりも患者さんに嬉しさを。

Q:クリニックの将来は?
リボーン洞戸を軌道に乗せたい。大赤字は覚悟の上。息子に借金を残す可能性があるので躊躇はしたが、これは自分の集大成。やり残してはいけないと思った。ただし自分の引退後は、息子は好きなようにしてくれたらいいと思っている。

答えにくい質問にも快くご回答いただき、有難うございました。