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『主治医はあなた~医者はどこまで患者と向き合っているか?』樋田和彦(著)
2025/05/26
図書紹介
【図書紹介】
樋田和彦(著)/22世紀アート(2024年12月)/2,200円
当協会中部支部を1991年に発足した樋田和彦医師(現在、協会顧問)が長年の経験で得た気づきやメッセージをまとめたWebbookブログ(http://www.holistic-hida.jp/webbook/)が1冊の書籍として刊行された。
本書には、耳鼻咽喉科医として長年患者さんと向き合ってきた樋田先生が、ある経験を機に「こころとからだ」を全人的に診る「心身統合医療」へと舵を切った経緯が詳細に綴られている。
「医療には人間が本来持っている良心というものが不可欠で、じつにすばらしい仕事」「病名にとらわれず、今、目の前にいる患者さんをしっかりとみる」という先生の言葉は、とかく効率が重視されがちな現代医療において、患者一人ひとりに寄り添うことの重要性を再認識させてくれる。
Oリングテストやキネシオロジー、高麗手指鍼など、西洋医学とは異なるアプローチが具体的に紹介されている点も本書の大きな魅力で、これらは単なる代替療法ではなく、患者自身の身体の声を聞き、内なる治癒力を引き出すための有効な手段として提示されている。
病気の症状のみを抑え込むのではなく、ストレスの原因を見つけ出し、心身を平穏な状態に戻すことこそが治療の鍵であるという著者の視点は、まさにホリスティックな医療観に基づいている。
アトピー性皮膚炎の患者さんとの対話や、花粉症へのネガティブなイメージを変えるアプローチなども書かれており、症状への見方を変えるきっかけとして新たな発見が得られた。
生成AIでまとめられた書籍とは異なり、樋田先生の豊かな経験に裏打ちされた文章は、深く心に響く読み心地を提供してくれるだろう。
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