コラム記事・研究会レポート

患者さんと共に歩む、 新たながんケアの道

2025/12/16
コラム

文・船戸 崇史
(船戸クリニック院長・日本ホリスティック医学協会副会長)

がん予防滞在型リトリート「リボーン洞戸」は、開設5年で400名を超える方が利用されました。開業時、「何とかこの施設が3年は持ちますように」と祈ったのが、昨日のことのように思い出されますが、利用者のアンケート結果から、「やはり、がんの言い分を聴く施設は必要だった」と私なりに確信しました。

現在のがん診療に関して、日本における一連のシステムは、不十分ではないかと改めて思います。がんが死因の第1位である以上、もちろん治すための研究は、今までもこれからも重要です。しかし、「死」が自然の摂理であると考えれば、西洋医学に「健全な死」というカテゴリーを加え、がん治療学に「西洋医学の限界」という項目を入れるべきではないでしょうか。がんが治っても、いずれ死ぬという真実として「死生学」を学び、がんは死に直結する病気であるからこそ、「どう生き切るのか?」「それをどうケアするのか?」までを、しっかりカリキュラムに盛り込んでいく必要があると思います。

自分も大事な人たちも、いずれ必ず死を迎えます。その「一人称の死」に対して「納得」し、「もういいよ」と思えるかどうかが大切だと思うのです。西洋医学は、その「死」を遠ざける手段として、極めて重要です。しかし、西洋医学の限界がくると、突然「緩和ケアだね」と言われるのです。これでは、「納得」からは程遠い。だから、ほかに納得できる方法はないかと、リボーン洞戸の門をたたかれる方も多いのです。

生きる目的を見つける

「がん」と診断されたら、混乱するのは当然です。しかし、私たちはそれを受け入れるところから始め、患者さんには「私(船戸)もがん患者ですから、あなたとはがん友ですね」と言い、がんができる仕組みと治る仕組みなどを説明します。
がんは、老化や遺伝といった要因と、個々人の生活習慣が複雑に絡み合って生じる病気ですが、「がんを治さないと死ぬ」という固定観念にとらわれると、治療がすべてとなり、自分にとって本当に大切なものを見失いがちです。ここには「がんとの共存の道」はありません。

私が重要視しているのは、「生きる目的」です。がんを受け入れ、その上で自分にとっての「生きる目的」を見つけることです。がんという重荷を背負いながらも、人生の景色を楽しみながら歩む。それは、まるで大きなリュックを背負って旅をするようなものです。
リュックがあまりに重すぎるなら、時には少し荷物を出す(入院、治療)必要があるかもしれません。
でも、少なくともこの重い荷物(がん)がある限り、動かないと言っていては、人生の旅に一歩も踏み出せない可能性があります。まあそれも人生かもしれませんが、私は悔いのない人生を生き切ってほしいと強く願います。

最近、リボーン洞戸を訪れる方のほぼ全員が、拙著『がんが消えていく生き方』(ユサブル)をよく読み込んで来られます。ありがたい限りです。

現在、私が臨床現場の講義を行っている某大学薬学部20代の学生さんが、この本を読んだ感想文を寄せてくれたのでご紹介します。深い考察と提言をされていて、先が楽しみな学生さんです。

『がんが消えていく生き方』を読んで

大学薬学部薬学科2 年 Aさん

がんの根絶を目指して医学は常に進歩しつつあるといいますが、未だにがん死亡率は十分減少していません。がんになった患者さんと顔を合わせる機会も、医療人になる以上、避けられない道です。
その際、患者さんに「あなたはがんです」と認知してもらう言葉を、私は言えるだろうか?
その言葉で患者さんを突き刺すことにはならないだろうか?
少なくとも今の私には言えません。
言葉は残酷なもので、その言葉がけ1つで、人の心の持ちようを変えてしまいます。
医師や医療人は、単純に数値を見るだけではなく、それを超えた「言葉の重さ」を理解しなければならないと思いました。

また、人生が思うようにいかないと感じるときに、私たちは気持ちに折り合いをつけることが容易にできるものでしょうか。
答えは否です。人生には停滞してしまう時期や、努力ではどうにもならないことがたくさんあります。
ただでさえ、自身ががんであるという多大なショックを受けている際に、時に「言葉がけ」が患者さんに致命傷を与えたり、生きる希望を奪いかねません。

今の私たちにできる唯一の行為は、かけがえのない「生」を謳歌することではないでしょうか。
「自分の望んだ場所で自分らしく生き、自分が納得する形で逝ける」これこそが理想的な人間の在り方だと私は思います。
がんになったとしても「今、死なないため」に治すのではなく、「治った後の人生をどう生き抜くか」。
たとえ、がんによる死が避けられなくなったとしても、生きがいを持って「残された今」を生きることは可能ではないかと思うのです。
そして、何らかの形で表現され、闘病中の患者さんや家族に伝えるための手段が必要だと思います。

しかし「その手段とは何か?」と問われてしまうと、今までの私は「分からない」と、この本を読むまでは答えていました。
1ページごとに読み進めていくと、がんに克つ5つの生活習慣である「良眠生活」「良食生活」「加温生活」「運動生活」「微笑生活」こそが、「免疫力を強化し、がんが再発しない身体をつくる」と説かれていました。
すなわち、がんの原因は生活習慣による身体の酷使であるということ。がんになる過程で免疫を貶める5つの生活スタイルが習慣化していることで、恒常的に免疫力が低下し、がんが成長することになります。
また、身体を酷使することによって生み出された、偏った生活により身体に滞りが生まれてしまいます。
これらをマッサージなどでほぐすことはリフレッシュにつながり、がんになる仕組みや治る仕組みを、勉強会やワークで自己分析することで、自身の「こうじゃなきゃ幸せになれない」という固定観念を捨てることができると思いました。

病をきっかけに生き方や生活習慣を見直す1つの契機と捉えて、しっかり向き合い、人生に目的意識を持つことは、今の時代に求められるものだと思います。そのお手伝いを、医療人が行うべきであると私は強く感じ、広めたいと思いました。
本書の考えは、患者さんだけなく、医師をはじめとする医療人に対しても必要なものであり、私もそうした医療人になりたいと思いました。
(原文の文体や表現を筆者が若干加筆修正)

『HOLISTIC MAGAZIN 2024』秋号より

 


船戸 崇史
船戸クリニック院長。
西洋医学を中心に東洋医学や補完代替医療も取り入れ、全人的な医療に力を注ぐ。 2018年「がん予防滞在型リトリート リボーン洞戸」を開設。がんを通して生き方を変えたい人のために、新しいアプローチで再発転移の予防に取り組んでいる。著書『がんが消えていく生き方』『「死」が教えてくれた 幸せの本質』(ユサブル)。