- Holistic コラム> 帯津良一
人間まるごとをどう捉えるか
帯津 良一
ホリスティック医学を一言でいうならば、「人間をまるごと」見る医学といっていいでしょう。しかし、この「人間まるごと」というのがもう一つはっきりしません。定義することが難しいのです。
人体は一定の容積を有し、しかも、この容積の中にさまざまな物理量(例えば電気、磁気、重力など)を含んでいて、それぞれに対応する”場”を形成しています。
例えば電場、磁場、電力場というようにです。さらに、まだ発見されない、より生命に直結する物理量も存在していて”生命場”というべき場を形成しているかもしれません。
その生命場には各物理量に応じたエネルギーが存在し、これらをひとまとめにしてポテンシャル・エネルギーと呼ぶならば、この生命場のポテンシャル・エネルギーこそ、「人間まるごと」ということなのではないでしょうか。
さらに、その生命場は皮膚によって境された閉ざされたものではなく、外界の場につながる、というよりも外界の場を形成しています。例えば、複数の人々が集まって地域社会の場は集まって地球の場をつくり、地球の場は宇宙の場をつくりあげるというように拡大していきます。つまり地域社会も生態系も、地球も宇宙も人間まるごとの一部なのです。
時間的にはどうでしょう。生命場は私たちがこの地球に上に生をうける前から存在し、死して肉体が滅びた後も存在しつづけるものとするならば、前世も死も死後もすべて人間まるごとは時空を超えて、そのアイデンティティを拡大していくトランスパーソナル(超個)な存在なのです。
人間まるごとが、そのようにトランスパーソナルな存在だとすると、人間まるごとを対象とするホリスティック医学も当然、トランスパーソナルな存在ということになります。つまり、目の前にいる1人の人間の健康とか病気について考えるときその人の属する地域社会も自然環境も地球も宇宙も、はては虚空までもが対象となり、前世も死も死後にも注目することになってきます。
そして、目を内側に向けるならば、人間(固体)の生命場は臓器の場を超えて含み、臓器の場は組織の場を、組織の場は細胞の場を、というように限りなく下部の階層に向かって包み込んでいきます。つまり近代西洋医学がこれまで対象としてきた臓器以下のレベルをすべて対象としていくのです。
がんやエイズのような難知性の疾患は人間の階層での出来事であるとするならば臓器の階層に築かれた近代西洋医学のみをもってこれを治療するのはおのずから限界が生じます。がんやエイズを克服するためには人間の階層に築かれた医学をもって当たらなければなりません。
ホリスティック医学が待望される所以はここにあります。
帯津 良一 (おびつりょういち)
帯津三敬病院名誉院長。帯津三敬塾クリニック主宰。
日本ホリスティック医学協会会長。
1936年生まれ。1961年東京大学医学部卒業。東大附属病院第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科医長を経て、1982年埼玉県川越市に帯津三敬病院を開設。
主な著書「死を生きる」(朝日新聞出版)、「健康問答」五木寛之氏対談(平凡社)、「万物を敬う」(春秋社)、ほか多数。
