ホリスティックコラム

私のホリスティック観

患者さんとの関わりの中で生まれる

 『Holistic NewsLetter Vol.65』

 「患者さんとの関わりの中で生まれる」

  文・黒丸 尊治(彦根市立病院緩和ケア科部長・当協会関西支部長)

 

 

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 もともと西洋医学の考え方やあり方に疑問を持っていた私は、ホリスティック医学の存在を知ったとき大きな衝撃を受けた。学生時代に漠然と抱いていた全体性や霊性、自然治癒力といった概念が、その定義の中に見事に表現されていたからだ。これを見たとき、自分の探し求めていた医学はこれだ!と一瞬にして悟った。以来、ホリスティック医学を実践できる医者を目指して行動を始めた。

 

 まずは内科、外科、産婦人科、小児科の研修を3年間行ったのち、関西医大の心療内科に入局した。最初は、とりあえずといった気持ちで入った心療内科の道であったが、今考えれば、ここでの経験が、のちに私のホリスティック医学観を大きく変えるきっかけとなった。

 心療内科医としての経験を積んでいくうちに、どうもホリスティック医学に何かしっくりこないものを感じるようになってきた。その頃私の中にあったホリスティック医学とは、様々な代替医療や西洋医学を駆使して、患者さんの自然治癒力を最大限に高め、それをもって病気を治すという単純なイメージであった。もともと西洋医学の薬があまり好きではなかった私は、患者さんの半数は薬の処方をすることなく治療をしていた。その代わり患者さんの間違った思いこみや行動習慣に変化をもたらすような心理療法的アプローチを中心とした治療を行っていた。その中で、患者さんは次第に信頼感や安心感、症状改善への期待感や自信といったものを持つようになる。たったそれだけのことだが、それで様々な身体症状は自とよくなっていくのである。

 

 そんな経験を長年積み重ねるうちに、心と身体のつながりを最大限に利用しながら、心への直接的なアプローチを中心とした治療を行っていくという私の治療スタイルが確立されていった。そんな私にとって、代替療法で自然治癒力を高め、それで病気を治すといった発想は、いつしか違和感を覚えるようになっていた。

 

 そんな釈然としない思いが、ある日突然一掃された。私は今まで、代替療法そのものが自然治癒力を高めるとばかり思っていたが、実はそうではなく、代替療法というひとつの道具を使うことで患者さんの肯定的な心の状態をうまく引きだし、それが自然治癒力の発動につながっているのではないかということに気づいたのだ。

 つまり、患者さんとのつながりや関係性を大切にすることで、まずは信頼感や安心感、期待感といった治療の基本となる心の状態をつくる。これだけでも自然治癒力にスイッチを入れることは可能だが、その力を十分に発揮させるためにはもう一押しが必要だ。それが納得感や自己効力感(自分もできるんだという感覚)、充実感、満足感といった、さらに一歩進んだ心の状態だ。これらをうまく引きだすために、私は心理療法的アプローチを利用してきたが、代替療法を使うことでもこれが可能だというわけだ。

 

 もちろん、代替療法そのものにも自然治癒力を活性化させる働きはあるが、それだけですべてを語ろうとするには、あまりにも心許なく頼りない。それよりも、代替療法を利用することで、患者さんに肯定的な心の状態を積極的に作り出すことができるという事実の方がずっと重要であり、影響力が大きい。実際、目には見えない心理療法を使うよりも、目に見える具体的な手段としての代替療法を利用する方が、ずっとコミュニケーションはとりやすくなるし、患者さんの心の状態にも大きな変化を引き起こしやすくなる。

 

 こう考えることで、私の中でようやくホリスティック医学と今まで行ってきた心療内科的アプローチとがつながった。これは私にとって革命的なことだった。以来、私の中で抱いていたホリスティック医学のイメージは変わった。自然治癒力は癒しの原点ではあるが、それに直接的なスイッチを入れるのは、西洋医学的治療や代替療法ではなく、患者さんとの関わりの中で生まれる肯定的な心の状態なのだ。そして、いかにしてこの状態をうまく作り出すことができるかが、ホリスティック医学の基本であると考えるようになった。

 

  その手段として用いるものは、心理療法でも食事療法でも手技療法でもエネルギー療法でも西洋医学的治療法でも、実は何でもよいのである。結果として患者さんが肯定的な心の状態になってくれさえすればそれでよいのである。その時にはすでに自然治癒力のスイッチはオンになっている。あとは自然の流れの中で、病が自と癒されていくのを待つだけである。

 ただし、療法や手技が先にあるのではなく、あくまでも患者さんの心の状態や価値観が最優先され、それをふまえた上で治療法を選択していくという柔軟性があってこそ、代替療法もその真価を発揮することができるのである。さもなければ、せっかくの代替療法も、肯定的な心の状態ではなく、不信感や不安感、疑念といったマイナスの心の状態をつくり出してしまう可能性が出てくる。その意味では代替療法は、まさに諸刃の剣となる。

 

 このように考えるようになってからは、どの代替療法が有効かといった議論は、何か本質からはずれているように思えてきた。以前、ホリスティック医学が「西洋医学は木を見て森を見ていない」と批判していたが、全く同じことをホリスティック医学もしているような気がしてならない。地に足のついたホリスティック医学の確立のためにも、代替療法そのものの有効性ばかりに目を向けるのではなく、患者さんとのかかわりの中で、肯定的な心の状態を引きだすひとつの道具として代替療法をうまく利用していくという視点を持つ治療者が一人でも多く現れることを願ってやまない。

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