ホリスティックコラム

私のホリスティック観

自然に対する畏敬の念から始まる医療

tatsutaka 山本 竜隆 (やまもとたつたか)
 朝霧高原診療所院長、富士山静養園園主。
 日本ホリスティック医学協会理事。
 アリゾナ大学医学部・統合医療プログラムAssociate Fellow1期生。

 

 

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 私は標高約700mの朝霧高原の山中に暮らし、近くに開設した朝霧高原診療所の院長として地域医療に携わっています。そして今年、自然林や湧水、清流などのある20000坪の山林を整備し、富士山静養園を開設しました。

 朝霧高原は、富士山西麓に位置し、森林に恵まれ、水も豊かでワサビ田が多く、広大な敷地で畜産業が盛んなエリアである一方で行楽地でもあります。かつては駿河湾から甲州へ塩を運んでいた“塩の道”が走り、縄文時代の土器なども発見されるなど昔から人が住んでいるところといえます。

 現在、自宅には水道やガスがありませんので、電気と薪、敷地内の湧水や井戸水で生活しています。東京育ちの私にとっては、全く経験の無い、想像もしていなかった日常です。しかし薪ストーブは、芯から体が温まり、心が癒され、精神衛生上も良いように感じます。自然水での飲食や入浴は、とても快適です。

 一方で、水を恵んでくれる山や森林、汚水が流れ出ていく先など、周囲の自然環境に関心が強くなりました。我が家には蛍が飛んできますし、鳶や鷺、さまざまな野鳥、そして鹿や野兎などが敷地内に出入りするなど、多くの動物たちと共存しているという実感があることも大きく影響しています。このような日々の生活の中で、都市部での生活では無かった自然の尊さや、物事のプライオリティー(優先順位)が明確になったように思います。そして何気なく毎朝、心から山々に感謝し、手を合わせているのです。

 

 さて、このような生活に至った背景には、自分なりの価値観や物事の見方、そして“優先順位”が確立したことがありますが、その際に多大な影響を与えてくれた2つの書物があります。一つは、上野圭一さんが翻訳され、アリゾナ大学統合医療プログラムの代表であるアンドルー・ワイル博士の著書「癒す心治る力」、そして、もう一つは数年前に、大手新聞社に掲載されていた、「北の国から」などでも知られる脚本家、倉本聰さんの次のような文章です。一部は数年前に私自身が付け加えたものもあり、どこからが原文であったか忘れてしまいましたが、書かせていただきます。

 

あなたは文明に麻痺していませんか。

“車と足は、どちらが大事ですか”

“石油と水は、どちらが大事ですか”

“薬品と食品は、どちらが大事ですか”

“知識と知恵は、どちらが大事ですか”

“理屈と行動は、どちらが大事ですか”

“批評と創造は、どちらが大事ですか”

“工業と農業は、どちらが大事ですか”

“治療と予防は、どちらが大事ですか”

 

 私は、前者の「癒す心治る力」を読み、本当の医療のあるべき姿、自分が目指す医療の方向性が正しいことを確信しました。この書籍がきっかけでワイル博士との縁も生まれました。

 統合医療プログラムを修了する頃に、ワイル博士から「山本が目指す医療は、ドイツなど欧州に良いお手本がある」というアドバイスをいただきましたが、当時は、東京都内に統合医療施設を開設していくことに夢中になっており、その意味がよくわかりませんでした。その後、東京での医療活動にて限界や、イメージしていたこととのギャップを認識するようになりました。この時期に、後者の新聞掲載と出会ったのです。この文章を読んで、たいへん衝撃を受けたのを覚えています。

 

 当時の私の“優先順位”が明らかに間違っている、そして、自然療法や予防医学と言いながら、自分は何と言う不自然で酷い生活をしているのか“大変に恥ずかしい”と思いました。何とか、“優先順位”を明確にし、より自然の摂理に従った生活、医療を目指していこうと考えたのです。そして、この頃ようやくかつてのワイル先生のアドバイスを思い起こしたのです。

 それからは幾度とドイツやイタリアを中心に欧州の自然環境を活かした郊外型医療施設を視察巡しました、そこでは、治療内容や設備というよりも、地域との繋がり、地域性や環境の活かし方、予防医療の在り方など、統合医療的な診療の流れなど、まさに目から鱗で、大きなヒントをいただきました。

 

 その後、4年以上にわたる土地探しが始まり、最終的に現在の朝霧高原に落ち着きました。「生活の有り方」「日本型予防医療+地域医療」を念頭に、多くの土地・地域を吟味しましたが、特に水やエネルギー、日本らしさ、地域環境の点で朝霧高原を選択しました。

 自宅や診療所の建築にあたっては、霧で湿度の高い環境を考慮した建築様式や素材、また外観も国立公園法や富士山景観法に対応することも必要でした。また地域独特の風習や挨拶など、地域の方々から多くの事を指導いただきながら開設準備を進めました。一見、“めんどう”と思いますが、個人的には、かつて日本のどこにでもあった年配者を尊敬する、子供達を地域で見守り教育する、公共の活動に参加・奉仕するというような村社会が現存していて、その良さを実感している毎日です。

 

 このような村社会は、食糧やエネルギー、教育などのさまざまな点で、今後必ず見直されると思います。そもそもグローバルという概念は、グローバルと対をなすローカルの概念があってこそ存在します。この地域性を重視したローカルな生活を行うこと、しっかりと地に足をつけて生活することが、よりグローバリズムへの第一歩であるとも思っています。

 さて私がアリゾナ大学医学部統合医療プログラムを修了してから約10年が経過しました。そして、この間、本邦においても代替医療や統合医療分野の認識や理解が少しずつ広まってきているように思います。これは、この分野の必要性を訴える医療従事者として大変好ましいことです。しかしそれ以上に、この数年間は、ヒトの生活の基盤となる水や大気、食糧やエネルギー問題、そして環境問題などがクローズアップされ、大きな課題となっていると思います。

 統合医療というと、一般的には難病などに対して、さまざまな医療を駆使して、医療をコーディネイトするというイメージが少なくないかと思いますが、私の中では、広義の予防医学から一般内科を行うような“地域医療としての統合医療”を目標にしてきました。ここで言う予防医療は、予防接種とか健康診断、人間ドックなどの狭義の予防ではなく、環境問題や倫理、社会性なども含めた広義のものです。

 

 実際に“養生”とは「健康をまもり維持するための生活方法を指す概念」とされ、時代や地域、社会情勢により、その養生方法も変わるもの、養生とは医療現場や教育機関など限られた時間や空間のみで行うものではなく、各自の意識や生活そのものであり“実際の行動でもあると言えます。この点で、まさに今の生活や医療活動が、目指してきたものを表現するに相応しい場と考えている今日この頃です。最先端の医療が充実した環境の優れない場所と、医療レベルは高くないが環境の素晴らしい場所、皆様はどちらで生活したいですか?

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